テクニックが体に馴染んでいるからこそなせるシンプルで不思議なカード・マジック
イギリスのアンダーグラウンドで話題になっていたベンジャミン・アールが満を持して発表したこのDVDは、日本でもオリジナル版が出た当初から話題になりました。彼のマジックの特徴は多くありますがその中の一つが、本編でも主張しているようにテクニックです。
しかし我々がこのDVDで本当に見て頂きたいのは、そこではありません。
いえ、彼のテクニックに魅力が無いと言っているわけではありません。それどころか彼のマジックに共通するシンプルで強力な現象を支えているものこそがこのテクニックであり、その緻密さはマジシャンであれば誰でも魅力を感じるものでしょう。何も怪しいことをしていないのに不思議な現象が起こるということはマジックが目指す到達点の一つであり、マジックの持つ本質的な魅力の一つです。ベンジャミン・アールは高度なテクニックによってそれを見事に実現しています。
では見るべきものとは何なのか
マジックを演じる上で多くの場合指先のテクニックは手法の根幹をなすものであり、重要なものであることは疑いを得ません。しかし実際に人前で演じる際にそこだけに注目していると片手落ちになってしまう、ということもまたよく言われています。では何が必要なのかと言う話をすると、通常は演出やサトルティの話になりがちですが、今回注目して頂きたいことはそれとも少し違います。
スクリプト・マヌーヴァでは今までテクニック自体よりもそれの活かし方に注目し、紹介してきました。シンプルな現象を可能にする高度なテクニックはもちろん大切。今回我々はなぜそれが機能するのかを見て頂きたいと思い、このDVDの翻訳を決めました。
機能するテクニック、機能しないテクニック
テクニックが機能するようになるには次のような段階があると思います。
- あるテクニックが物理的にできるようになる。
- そのテクニックを体に馴染ませる。
- そのテクニックを手順に馴染ませる。
この段階を経て初めてそのテクニックの気配が消え、「何も怪しいことをしていないのに不思議な現象が起こる」ことになります。昨今は高度なテクニックを紹介する映像が多く発表されており、それが「できる」人たちも増えてきました。しかしそれだけでは、上図の(1)の段階が終わったにすぎません。またマジックの中には手順に知的なタッチが工夫されたものもあり、そういった演出やサトルティの工夫は上図では(3)に当たるものです。そういったマジックは弊社のリリースDVDの中で今までも多く紹介してきました。しかしその他にテクニックの気配を消し、何も怪しいことをしていないのに不思議な現象を起こすために不可欠なのは、(2)の「テクニックを体に馴染ませる」部分なのです。
魅力の裏側にあるもの
このDVDには非常にビジュアルな現象がたくさんあります。それを実現させるために多くの超絶技巧が出てきます。それらのテクニックはとても美しく、スライハンド心をくすぐるものであり、単体でも練習しがいがあるものばかりでしょう。しかしこれが観客の驚きの体験に直結し、マジシャンの心を動かすのは、そのテクニックが「できている」からではなく、その気配を感じないから。本人の動きに「馴染んでいる」からです。それがどういうことなのか、それこそがこのDVDで我々が見て欲しいと思ったことです。
とは言え、おそらくただこのDVDを見ているだけでは、実演通りに使われているテクニックをこなせるようになる人は少ないでしょう。しかしそれは(1)だけにしか着目していないからであり、(2)の部分がどうなっているかを意識すれば、自分自身の演技に当てはめたときにどのような動きをすれば良いのか、それを探るヒントが分かるのではないでしょうか。
「テクニックが上手い」ということの方向性はこちらにあると思っています。
収録内容
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コレクター1
コレクター2
ラリー・ジェニングスの「コレクター」を、よりビジュアルにアレンジ。一瞬でA4枚の間に観客のカード3枚がはさまります。
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オープン・トライアンフ
ダイ・ヴァーノンの「トライアンフ」を、観客が自由に言った1枚で演じます。
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エース・アセンブリ
4箇所に置いたAが、1箇所にすべて集まります。
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シェード・オブ・ホフジンザー
ホフジンザー・プロブレムを現代風に解決。非常にクリーンな解決法に感動するはず。
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プロフェシー・シフト
自由に分けたところのカードがすべて一致します。
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ソフト・スプレッド・プロダクション
おまじないをかけると、観客のカードが1枚ずつ表向きで出現します。広く応用できるアイデア。
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ストローク・チェンジ
指先でなでるだけで変化するカラーチェンジ。
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ポップ・オーバー・ムーブ
カットすると、カードが1枚飛び出てきます。
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ルース・ダブルリフト
指先で行う新しいダブルリフト。
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ストリームライン・コントロール
何気ない動作で行う複数枚のカード・コントロール。
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サイド・ファロー・フォールス・シャッフル
ファロー・シャッフルを使ったフォールス・シャッフル。
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クリスバックグリーンホフ&シビル・ショー
コリバーゲン
アストン
ベンジャミン・アールが実際に使っているフラリッシュ3選。
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フル・スート・プロダクション
適当なマークを1つ選び、AからKまで全て出します。
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